『ガンダム』生みの親・富野由悠季が感じた手塚治虫・宮崎駿の凄み!



日本を代表するアニメコンテンツ『機動戦士ガンダム』の原作者としても知られる富野氏は、75歳にして劇場版アニメ『Gのレコンギスタ』を制作中。 (C)oricon ME inc.
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 日本のアニメ界を創世記から支えてきた巨匠・富野由悠季。日本を代表するアニメコンテンツ『機動戦士ガンダム』の原作者としても知られる富野氏は、75歳にして劇場版アニメ『Gのレコンギスタ』を制作中であることを公表。奇しくも、同年代のアニメ監督・宮崎駿もジブリ新作映画の制作を発表している。そこで今回、富野氏に、ライバル"宮崎駿から受けた影響"や"アニメ制作への想い"などを聞いた。

【写真】 ユニコーンガンダム立像、台場に立つ

■「アニメ好き」「ロボット好き」が作った映画は劇としての面白みがない

 『機動戦士ガンダム』で"リアルロボット"というジャンルを開拓。富野氏の歩んできたアニメ史は、日本の"巨大ロボットアニメ"の変遷そのもの。しかし、富野氏は"ガンダムの富野"と言われることに満足はしていない。
「所詮は"巨大ロボットものでしょ"と、下に見られてきた時代から、僕はずっと、巨大ロボットものを"一般化"するためにどうするか? を考えてきた」と富野氏。「『巨大ロボットものを、ロボットものとしてだけやっていませんよ!』と言わせてもらいます」とも。

 そもそも、巨大ロボットアニメは映画的な媒体であり、ロボットものをやるなら映画の性能を利用するしかない。そして、まず映画の大前提として、「アニメ好き」「ロボット好き」「メカ好き」、そういう人が作った映画は劇としての面白みがないのだと富野氏は強調する。

 映画は演劇の延長線上にある。絶対的に観客の時間を縛るのが演劇であり、観客にいかに気持ちよく見てもらえるかを考えたとき、2時間が限界。そのうえで劇を作ることを意識するべきと考えて制作に従事してきたが、アニメ業界としては必ずしもそうなっていないと警鐘をならす。

■『君の名は。』も映画とは思えない部分がある

 「東宝でいうと、初代の『ゴジラ』(1954年)はまだ許せます。しかし、技術的に実写とミニュチュアのバランスがすごく悪い。そうしたものを演劇的に調整してなめらかに見せる配慮がみえない。庵野(秀明)監督の『シン・ゴジラ』(2016年)でようやくこなれてきた印象はあります」。しかし、その前のハリウッド版『GODZILLA』は、「"好き"というだけの人たちが集まって作った映画でしょ?」 と喝破する。「ヘリコプターがミサイルを撃っていれば気が済む。街を壊す絵で気が済む。そういうのが好きな人に作らせればいいものができると思っている。『君の名は。』も映画とは思えない部分がある」と同氏。

 「けれども、芸能というのは客を集めてナンボの世界だから、その部分だけでいえばあれでよいともいえるから全否定はしません。ただ、動員数に屈服してしまって、映画評論家といわれる人たちが映画の内容に対してきちんと評価できていません。そんな評論だと新海(誠)監督が堕落していくだけだよと言いたいですね」と、映画界への指摘も容赦がない。富野氏は、"映画好き"に映画を作らせちゃいけないと、なぜわからないのかと繰り返し強調する。「なぜこんなことを言うかというと、自分の作る映画がヒットしないからで、負け犬が吠えているだけです(笑)」

■僕は、宮崎監督にバカにされたことがある立場の人間

 富野氏と、スタジオジブリの宮崎駿監督は同じ1941年生まれの同世代。宮崎氏は先日、監督復帰を宣言。同じアニメ監督として意識される点はあるか富野氏に聞くと、「同世代だから意識はします。かつて一緒に仕事をした中でもあるし、バカにされたこともある立場の人間ですから、嫌でも意識はします」と、心中を語ってくれた。
 「これは説明できない部分でもあります。『そこを言ってくるか』という見識、知識の問題です。宮崎監督と自分を比べると、その点では歯が立たない。さっきから僕は『メカが好き、ロボットが好き、だけでロボットものが作れると思うなよ』と強調しているのは、言ってしまえば、宮崎監督が僕に言ってくれたことなんです」

 具体的に何を言われたかと言うと、「富野くん、それ読んでないの?」その一言。宮崎氏が聞いたのは"堀田善衞"氏の著書で、富野氏は知らない本ではなかったため、本当は反論したかったが言葉が出てこなかったようだ。「家の本棚にはその本があって、半月前に半分くらい読んだ本だった。宮崎監督は大学時代からその本を読んでいて、アニメ作家になってからはその人とも付き合いがある。その学識の幅とか、深みが圧倒的に違う」。それを思い知ったとき、自分では競争相手にならないと感じたのだという。

■手塚治虫のストーリーテラーとしての実力は宮崎駿の3倍!?

 1974年に放送されたTVアニメ『アルプスの少女ハイジ』ではいっしょに仕事をしたことも。宮崎氏の仕事ぶりは富野氏から見てどんなものだったのか。

 「当時、『ハイジ』であれば5日もらえれば1本の絵コンテを描いてみせる、という早書きの自信がありました。僕は虫プロ時代(アニメ制作スタジオ『虫プロダクション』)に手塚(治虫)先生の早書きも見ていますが、手塚先生と宮崎監督の動画はちょっと違った」と富野氏。宮崎氏はTVサイズに合わせたものを描く。それに比べて、あくまで手塚さんはアニメに憧れているディズニー好き、という印象だったとのこと。ただ、それはアニメに限った話。「手塚先生は漫画家、ストーリーテラー、アイデアマンとしてだったら誰にも負けない。宮崎監督より3倍くらい上かも知れない」。そんな2人の早書きを見て、自分なんか歯が立たないとわかってしまったのだと富野氏は述懐する。

 手塚治虫、宮崎駿のような作り手をそばで見ていると、ひとつの目線だけでアニメを作れないのだと富野氏は語る。「宮崎監督は『紅の豚』が作れるから『風立ちぬ』も作れる。メカのディテールはもちろん、物語の描き方も熟練している。だから、『風立ちぬ』みたいな巧妙な作劇ができる。僕からすると、あの作品はアニメという枠を超えた"映画"なんです」。最近でいうと、片渕須直監督の『この世界の片隅に』が、アニメではなく"映画"であると同氏。「その凄さを理解したうえで、巨大ロボットもので"作劇のある映画"を作りたいと思っています」(富野氏)



(出典 news.nicovideo.jp)

kurobou

kurobou

手塚治虫、宮崎駿を間近で見ていたというのがもうスゴイ経験だと思う。そんな中で独自の路線を歩んでいるのだから、やっぱり富野由悠季もスゴイ!

ねぐせ

ねぐせ

アニメから得た知識でアニメを作り、ゲームから得た知識でゲームを作り、漫画から得た知識で漫画を描き、ラノベから得た知識でラノベを書く時代だからね

yakusidou

yakusidou

これは本当にそう思う、憧れで業界に入った人間は二番煎じを量産してるだけで、今のアニメは絵は綺麗だけどシナリオはもう滅茶苦茶に劣化してる。